進学 | スティルマイン

進学

夜遊びに入学しつつも平坦な日常は変わらなかったが、徐々に非日常の割合が増えていった。慣れてくるにつれ、顔見知りのセンパイも増えた。

しばらくすると、私の引率者兼保護者だった同級生は「ディー・ジェー」にエボリューションし、少しずつ露出し始めた。電車通学の私を置いて、彼は「ミニクーパー」を転がし始めた。

雰囲気に着いて行くのに必死な私はその必死感を出さぬよう気をつけつつ、彼が誇らしげに揺れているブースの前で「ここでこの曲、分かってるねぇー!(俺も分かってるよー!)」感を演出した。今となっては、何が何だったのかさっぱり分からない。
通学するうち、この世界ではモテるベクトルが高校とは違うことを学んだ。「こっちはサッカーが上手くてもモテねえんだな」と思った。そもそもサッカーが上手くない私は、こっちでモテようと思い始めた。


かつてジャズ喫茶というものが流行ったそうな。学生運動というのも流行ったそうな。
ちっぽけな自分が何をどう発散したら好いのか分からなかったが、当時そういうものがあったら私たちのうち何割かはのめり込んでいたんじゃないかと思う。

もともと夜遊びに親しんでいたお兄さんお姉さんたちは変わらず伸び伸びと遊んでいるように見えたが、ぽつぽつ増えていた同級生たちは、なんだか全員欲求不満に見えた。そんな中、私もそれらしく欲求不満を演出していた。進路を迷っていた私は「もしや、こっちか?」と思い始めるようになった。