いれて | スティルマイン

いれて

子どもの頃、「いーれーてー」という提案をし、遊びの輪に入ることが苦手だった。今日日の子どもらも「いーれーてー」、「いーいーよー」、のやり取りをしているのだろうか。


私は「いーれーてーなんて平気さ、拒絶されるわけないしみんな友だちだ!」といった顔色をしながらも、こっそしビクビクしていたと思う。
「いーれーてー」、「いーいーよー」、一見なかよし、半ばルーティンであるこの冗長なやり取りにおいて、「いーれーてー」と言われた側はそれを拒否する、喰った術を持たない。

――もし、彼らの本心がボクを輪に入れたくなかったら、気を遣わせてしまう。これは、形式的な問答を通した、押し付けではないのか。


「もしかしたら拒絶されるかもしれない」という恐怖感、そして「既存の輪の連中に気を使わしているかもしれない」という不安感が「いーれーてー」には潜んでいる。
「そんなの潜んでねえよ!」といった顔しながらそれらを飛び越え、「いーれーてー」は私の口からハイジャンプのように発せられていたと思う。


キーキャーやかましい焼き肉屋で、焼けた肉に箸を伸ばせぬまま、そんなことを思い出した。