ルーティンワーク | スティルマイン

ルーティンワーク

電車に乗り込み、空席を見つけ、ほっと座っていたところ、次の駅で同じ車両に乗って来、キョロキョロしながら私の隣にのっしり座った白人のオッサンの体はマーベラスなデカさであり、その大きさと窮屈さにただ驚いているうちに、その次の駅で同じドアから老夫婦が乗ってきた。

開放感とともに席を立ち、さり気なく席を譲ってみたところ、隣のオッサンもそそくさと席を立ち、少し離れたところから私に「アア!」という口でにこやかに顔を上下させた。


愛想良く目配せする彼に向かって少しおどけた表情をするに留めたが、やはりなんとなく嬉しく、彼をおんぼろ居酒屋に連れて行き、ファミリーの写真を見せられ、「アメリカに残して来たんだ、中々会えなくて寂しいよ」としょげて見せる彼を朗らかに慰める、といった妄想を楽しんだ。

しばらくして彼は普通に電車を降り、私は妄想と電車内に取り残された。こんなもんだと思う。