行方不明 | スティルマイン

行方不明

連絡がとれない友人がいる。
彼は小学校以来の友人だった。二十歳を超えてもつるんでいたのだが、何時の間にか連絡をとらなくなってしまっていた。

こちらから連絡をとらなかった、深い理由は無い。急ぎの用事もなければ、今更関係が変わることもない。

昔っからの友人なんて、いつ会っても昔のままだ。実際私たちは仲間内で会う度に、当時と全く同じ遊びをしていた(酒とテレビゲームとマージャン)。

いい大人なのに、その度に昔と同じように爆笑していた。ノスタルジックに懐古するからという訳ではなく、単に楽しいからだ。


そのうちの一人と連絡がとれない。家も携帯も変わってしまっていた。


ある日、その頃の仲間と夕食を食べていたらその友人の話になった。人づてにのそいつの噂を聞いたやつがいたのだ。

彼はどうやらこっそり結婚して他県に引っ越しているらしい。苗字も変わったようだ、と言う。


あーだこーだと憶測でしかその友人のことを語れない私たちの間に妙な感覚が生まれたが、それはまあ良い。私たちと連絡をとりたくない事情があるのだろうし、そこを突っ込むのも少年時代のノリではない。
子供感覚では、「水くせえよなあ」と言うこと自体が水臭い。芝居がかり過ぎるのだ。また数年後ふらっと地元に帰ってきて、一緒にマージャンやれれば良いのだろう。


そして私もまた行方不明者なのだろう、と思った。


人間は色んなカインドオブ引越しをしている。大きな別れのイベントなぞ無くても地続きでいるようで人生には無数のクレバスがある筈だ。

ひととの付き合いを大事にしているようで、おそらく私はそのクレバスを作りまくり、見ない振りをして生きてきた。処世術だ、と言っても良い(言わなくても良い)。


私ははたして何人の人間にとって行方不明者なのだろうか。昔を懐かしむ度に思う。

が、思わなかった振りをする。目をつぶってクレバスを飛び越えていく。

そしてたまにクレバスに落ちる。