エスカレーターズ | スティルマイン

エスカレーターズ

幼い頃、私はエスカレーターのカラクリに魅せられていた。
――階段が動く!手すりまでついてきちゃう!なんてファンタジー!


そのミラクルの解明には至らぬまま、私は大人になった。残念だ。
今日も無関心にエスカレーターに乗った。階段は色々と辛いからだ。

昇りきるとそこには当時の私同様エスカレーターのミラクルに魅せられた幼児が手すりの構造の解明に勤しんでいた。邪魔でしょうがない。危ない。
色んなモンを忘れ一人没頭している我が子を母親は少し離れたところから暖かく見守っている。いいのか。

幼児を回避しながらエスカレーターを降り、ふとこういう母親が天才を作り上げるのかと思った。
母親の側から離れると不安で「オエッ」となる幼児だった私は天才になれなかったわけだ。

そういえば昔のエスカレーターは階段と階段の隙間から緑色の光が漏れていた。地面までが遠くなったからか、最近見ない気がする。まだ光ってるのだろうか。今度こそ光の行方を解明しようと思う。